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「気づき」はスタートの合図!介護のシゴトが好きなんです

「ケアの統一」の本当の意味

プロによる介護の基本は、チームケアだ。

ケアマネジャーを媒介にして、介護、医療、地域の専門職たちが連携をする。

 

特に介護スタッフは、一人のお客さまを複数のスタッフで担当することが多い。

 

さらに、入所施設では、24時間をチームのメンバーで引き継ぎながら、継ぎ目なくケアを提供していくことになるから、他職種だけでなく、チーム内での連携が欠かせない。

 

介護職の間でチームミーティングをしていると、必ず出てくるといってもいいワードがある。

 

ケアの統一

 

みんなが同じケアをするってことでしょ?

当たり前じゃ〜ん。

と、呟いた そこのあなた!

 

 

「同じケア」ってなんですの?

 

一つ一つの工程をこと細かく描いた手順書を作成して、誰がケアに入っても、全く同じ手順で行うことを「同じケア」「ケアの統一」と呼ぶのでしょうか。

 

僕は、それは「ケア手順の統一」にすぎないと考えています。

 

いつでも誰でも同じ手順で、同じ品質を…

何か工場みたいだ。

作る人にばらつきがでないように、ロボットと機械を使って、均一な製品を大量に生産する。

 

もし、手順を統一することが、ケアの統一の最終目標だとしたら、ロボットが介護職の代わりになることが可能になるかもしれない。

むしろ、手順の統一は、人よりもロボットの方が得意だ。

 

 

ケアの対象は、言うまでもなく「人」

 

こだわりのパン屋さんは、その日の気温や湿度などに応じて、水の温度や、小麦粉の配合、発酵時間を細かく調整する。

 

ケアの対象である「人」はどうだろう?

昨日と全く同じ状態の人っているかな。

血圧・体温、身体の痛み、空腹感……そして気持ち。

誰だって、昨日と全く同じでいることは不可能だ。

 

一流のスポーツ選手が、試合前のルーティンを大切にするのは、昨日の“良い状態”と同じに近づけるための「努力」だ。

つまり、一流選手が努力したって、完璧に昨日と同じ状態を保つことはできないのだ。

いわんや、我々一般人をや。

 

当然、ケアを受ける「人」は、毎日変化する。

ケアを行う人も、体の大きさや筋力など、個人差がある。

 

だから、「ケアの手順の統一」は意味がない。

いつでも、誰でも、同じケアをするということは、ケアを受ける側の変化に関係なく、ケアを行う側のキャラクターにも関係なく、同じことをするということ。

 

 

美味しいパンを焼くには、その日の天候に合わせて分量や時間を調整するように、良いケアをするには、その日のケアを受ける人の体調や気分、そしてケアする側の体格や技量に合わせたケアが必要だ。

 

それって、

一人一人の介護士が、我流で自分本位のケアをすること?…ではないよね。

バラバラのケアによって、一番困るのはケアを受ける本人であることは、自明ですね。

 

 

何を統一するのか

 

ケアの統一は必要。

では、何を統一するのか。

 

それは、「ケアの目標」

何のためのケアなのか、その目的を統一することが大切。

本人を中心としてケアに関わるチーム(家族等も含む)が、同じ目的・目標に向かってケアを実践することが、一番大事なのです。

 

例えば、一人でトイレでの排泄動作を行えるようにすることが目標なら、基本的には最初からオムツを使用するのではなく、極力トイレでの排泄を試みる。

 

しかし、「お腹の調子が悪く、失敗することが心配」というとき、

A:「トイレで排泄する」と”手順”で定められているから、オムツをつけてはいけない。

B:安心のためにオムツをつけておくことで、自尊心を保つ

 

どちらが良いケアなのでしょう。

これは分かりやすい例ですね。

 

「ケア手順の統一」が正しいと思って、躍起になっていませんか?

 

大切なのは「ケア目標の統一」

 

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